ビバ出産1

となりで娘が寝ている。

こないだまで、ワタクシのお腹で動いていた手や足が
大きく伸ばせるのが嬉しいのか、赤ちゃんらしくなく、大の字になって
寝転んでいる。

出産から何日が経ったのだろう。
もう、遠い遠い昔のことのように思う。
それだけ、濃い時間だった。
そして、忘れたいくらい、痛かったし、忘れられないくらい感動だった。


8月22日に日付が変わって少ししてから、
さて、寝よう。と布団に入ってから、様子がなんだか変だった。
お腹が痛いなぁ。でも、こんなもんが陣痛じゃないよなぁ。
というくらい、あまり痛みも少なく、自分で思う陣痛の痛みではないと思っていた。

でも。
おかしい。なんだか規則的に痛みがくるではないか。
ちょっと測ってみようか。
・・・・今のところ、8分くらいの間隔で痛みがくるではないかっ!
よしっっ!!
これが陣痛かっ!ようやった!このまま、するっっと産まれてくれ!
と、のん気なことを思えるのはこの時までだったような気がする。

陣痛は間隔がどんどんと短くなる。痛くなって、そしてなんともなくなってという間隔がだ。
その変貌っぷりがすごい。
痛い時にはアントニオ猪木アゴが腹の中で暴れまわって意味なく「元気ですか〜!!」
と言われているような腹だたしい感じで、
予告もなく猪木が去って、メルヘンタッチな感じの休息がやってくる。
木漏れ日のブランコに乗って「あははははは、うふふふ」の世界だ。

その極端を繰り返し、最後のほうはもう、どっちがどっちだかわからなくなってくる。
猪木がブランコ?みたいに、頭が混乱してくるのだ。

その間隔が5分になったら病院に来てください。といわれていた。
気付けばすでに朝になっていて、それはそれは強い日差しの朝だった。
タクシーで行こうと思っていたけど、母がワタクシの姿を見て
無理やり饅頭屋を休んだ。饅頭に勝った!と思いながら、車に乗りこむ。

早く、病院について欲しかった。
でも、ちょっとした振動がキビシく思える。
「ゆっくり、そしてはやく!」と、頭おかしい事を唱えつつ病院到着。
陣痛室というとこに通されて、子宮口が何センチ開いているのか確かめた。
今、6センチってとこかなぁ。頑張って!と看護婦さんが言い、
赤ちゃんの心音とお腹の張りを調べる機械を腹につけ、そのまま
また陣痛地獄を味わうのだ。勘弁してくれ!!

ここで、あの機械登場。
そう、日記にも登場したが、この病院には最新の機械というのが導入されていて、
呼吸がうまく出来るように、陣痛がきたら、機械のボタンを押すと
妙なヒーリングミュージックと共に誰だかわからない人の呼吸が
「ははぁぁぁぁああああ、ふううぅぅぅ」
と聞こえる仕組みである。看護婦さんが家族にその使い方を言って、部屋を去った。
陣痛がくるたびに、ワタクシは地獄の汗をかき、そして猪木と腹で闘っているのに
なにがヒーリングじゃいっっ!!という感じだが
その旨さえも伝える気力がない。
家族はワタクシが苦痛の顔をするたびにちょっと楽しそうにその機械のボタンを押して
呼吸を自分でもやっている。

最初は、出来るかいっ!と思っていたが
なんだか最後の方は、ボタン押してっっ!と自分から言っていたそうだ。
正直いって、何の効果もないと思っていたが、ちょっとは気がまぎれるから
よかった気がする。

陣痛室に入って、どれくらいの時間が経ったのかは、さだかではないが
とにかくもう、尋常じゃない痛みが襲ってきた。
猪木だけじゃない。
坂口も、テリーも、ドリーも、みんながよってたかっているって感じになってきた。

看護婦さんにはやはりまだ理性がきくのか
「うーーーー。いたいです」
とか言えるが、家族にはもう、オマエは監督かっ!っちゅうくらい
ひどい注文ばかりだしていた。
腰を叩いてもらっていたのだが
「もっと、つよくっっ!そこじゃないっっつーの!はやくっ!」
星野仙一も真っ青な声で言っていた。

子宮口は10センチ開かないと、子供はでてこれないので
それまで我慢しなければならない。
看護婦さんがくるたびに
どうか、10センチになってますように!!と祈っているのだが、虚しくまだ8センチ。
とか言われるのだ。

最後、あと1センチで全開!になるときには
「もう、ダイジョウブです。9センチでもウチの子出てこれると思うので、
これでお願いします。」
と、本気で言いたかった。でも、そんな事言えるわけもなく
ひたすら耐えて、待つ。
その待つ間に、ワタクシは色んな事を頭で考えた。
どんな事をといわれても、正直、わからない。
覚えていないというのがいいのか。夢を見ているような、へんな感覚だった。

「じゃ、もうそろそろ分娩室いこうか」
という看護婦さんの声が天使の声に聞こえた。
そうだ。もう、いきんでいいのだ。
おもいっきりいきんで、そしてチビに会うのだ!

そう思うと張りきってルンルンだけど、でも陣痛はつづいているわけで。
北の国からの純ばりに暗い顔で、
隣の分娩室に歩いて行った。
その歩き方は、まるで産まれたての子馬のように
足をプルプルさせて、前かがみだった。

そして痛くない方法がどんな方法かわからなかったので、
分娩台には自分でもおどろくくらいのスピードで飛び乗った。
本当に陣痛きてる人?と疑うような、ヒラリという感じで。
ゆっくり動作をすると、痛いのだ。

続く