名古屋タイムカプセル

幼稚園の頃から小学校卒業まで
名古屋市千種区に住んでいた

名古屋弁
今はでないけど

名古屋の地下鉄で
「〜でかんわぁ」
というのを聴くといろんな思い出がよみがえる


久しぶりに、名古屋に行った

大阪からだと
眠れもしない、本を読むにも中途半端な
新幹線の乗車時間だ


あっという間に
到着


名古屋自体は10なん年ぶりだけど

在来線や、地下鉄に乗ったのは
住んでいた時からなので
恐ろしいことに30年以上ぶりになった


取材の仕事を終え


帰るまでに時間はまだあった

一か八か

間に合うかもしれない


そう思う前にもう、地下鉄東山線に乗っていた


一社(いっしゃ)
という駅に降りると

よく行っていたファーストフードはなくなっていた

目的地に早く行きたくて
そこからタクシーに乗り込み
場所を運転手さんにつげた


昔住んでいたという話をしたら
運転手さんも、今から行く場所に昔すんでいたそうで
話に花が咲いた


目的地まで
もっとかかると思っていたが
あまりにあっさりと着いた


そこは

父が殆ど家にいなかったので
私と母と兄、三人が
週に一度、いや多い時には週に二度は通っていた
私たちにとっての馴染みすぎる
中華料理屋だった



行く前に検索したら
食事系サイトに載っていてまだ営業しているのはわかっていた


お昼は14:30まで


タクシーから降りるときに14:10
よし、間に合った
ホッとした瞬間


お店のドアを開ける前に
立ちはだかったのは

準備中の立て看板

その下には

14:30の文字のところを無造作にマジックで
14:00にかえてあった


ああああああああ


ちらちらと、従業員の方の姿が見える

私の気配を感じ

「すいません、昼おわったんです」
と、言われたところに

「突然すみません。私、30年前に、家族でここによく通ってて。仕事で近くまできたから、どうしても行ってみたくて。
母に見せたいので、中の写真、撮らせてもらうことは可能でしょうか」

と、恐縮ながら話すと

店主に確認してくれて
中に入れてくれた




いつも
ここで頼むのはチャーハンだった

きれいに、盛り付けられた
こんもり山のチャーハン
グリーンピースは固めで
私はそれを口に入れて
うまく、きれいにグリーンピースを二つに割れたら1ポイント
と、決めていた


帰り、お金を支払うと
クッピーラムネ
フェリックス君ガム
どちらかをもらえた

兄と、口をコナコナにしながら
帰り道まで幸せな時間だった


そんな事が

変わらない、ぶら下げてあるメニュー表を見たら蘇った



そして、店主の方と話していたら





あれ、この方は
あの頃、いた人だ


そう、まだ、すごく若かったけど
面影がある


「あの、失礼ですが、30年前、いらっしゃいませんでしたか?」

いましたよ、ずっと、ここです。
前の店主が辞めてしまったので
私がやっています


あぁ

タスキをつないでくれたから
こうして、またここに来られたんだ


感謝の気持ちを告げて

またいつか
母と兄と
営業時間中にきますね


懐かしい、ドアを閉めた



引っ越し、転校というのは
子どもにとっては
いいことばかりではない
たいへんなことの方が多いかもしれない



でも


こうして

想い出を辿る旅ができるのは

そのおかげだ


歳を重ねて学校でやったタイムカプセルを開けることはしたことないけど

引越しを経験したおかげで

タイムカプセルを開けたのと同じような時間が訪れた